【ドラクエ5-天空の花嫁テーマ考察】運命を変えられない僕達に、それじゃあ何が出来るんだろう?【11818文字】
まえがき
以前からドラクエ4・5・6、所謂天空シリーズを通してのテーマに関する記事を書きたいと思っていたので、それならそれぞれについても書いてみようという試みの第一弾天空の花嫁編です。
この試みの為に再プレイをしていたのですが、プレイする自分の年齢が上がっていく毎に「ここが素敵!!!」となるポイントが変わったり増えたりしていく気がしますね。
結婚イベントや子供が生まれた時、その後の石化イベントなどは今までプレイした中で一番自分の感情の起伏を感じましたし、もっと年齢が上がっていくと今度は恐らくパパス関連で同じようになるのでしょうね。
ドラクエ全体を通して見ても異色な要素が多々ある本作ですが、結局本作のストーリーテーマってどういうものだと言えるんだろう?それってどんな意味があるんだろう?という視点をメインで取り扱っている記事となります。
それの取り巻きとして、作中では明言されてなかったけどミルドラースの正体ってこうなんじゃない?みたいな考察なんかも行っています。
ミルドラースはよく影が薄いラスボスのような扱いを受けていますがドラクエ5を俯瞰してみると主人公よりも主人公らしいような人物で、裏主人公と言ってもいいクラスの経歴や苦悩、努力があったんだなと感じました。
当ブログで扱う記事では毎度の事ですが、前提として「ゲーム:ドラゴンクエスト5~天空の花嫁~」内で得られる情報のみを取り扱います。
その他のゲームや書籍・CDは勿論、製作陣の誰々のインタビューでは~と言った内容も排除しているのでご注意ください。
当記事を書く為にプレイしたバージョンはDS版リメイクです。
また、ネタバレ全開の記事となっているので気にされる方はプレイ後にまた覗いて貰えると嬉しいです。
花嫁戦争(ビアンカフローラ戦争)はもうやめないか?という記事も現在執筆中なので良ければ完成次第そちらもどうぞ。
- まえがき
- 運命という絶対的な力
- 遺すべきものは命ではない
- 神をも超えたはずのミルドラースの敗因はなんだろう?
- 家族足り得なかったはずの家族が、それでも家族を始められたのは何故だろう?
- ミルドラースについて
- テーマの統括-あらゆる運命においても抱ける幸せってなんだろう?
- マスタードラゴンについて
- あとがき
運命という絶対的な力
本作品の主要人物達は“定められた運命“によって突き動かされています。
- 言い伝えに従って伝説の勇者を探すパパス/主人公
- 伝説や予言通りに生まれ、伝説の勇者という生まれに従って魔王を討たんとする息子
は勿論プレイヤーと共に旅をしましたが、もう1人絶対に忘れてはならない人物が居ます。それが
- 予言に従って伝説の勇者を探すミルドラース
です。
そもそもこの物語で起こる様々な事件は、自分が伝説の勇者に討たれる事を予言したミルドラースが、その勇者は高貴な身分の元に生まれるという事を更に予言したので先に潰しておこうという動きに端を発しています。
結果的にその動きは報われなかった為、定められた運命(予言)に抗おうとしたミルドラースが努力虚しく運命通り勇者に討たれてしまう物語だと言えますね。
ミルドラースは自分が視た予言の結末を変える為に勇者の芽を潰したり、魔界で力を蓄えたりと運命に必死に抗い、最終的には「神をも超えた」と豪語するまでに至りますが、翻って主人公サイドは運命や伝説と言った定められたものに従って生きていたらミルドラースを倒せちゃったと言った形の対比が取られているように見える構図になっています(その内容は過酷ではありましたが)。
個人的には、自分の強い意志で運命を変えようとした上に、そもそも人間でありながら神になる事を強く望んだという前向きな意志力全開のミルドラースを応援したい気持ちが強いし、運命に従っていたら何かを為せただけの主人公サイドよりもそっちの方を尊びたいとも思うのですが、事実として物語上でミルドラースは討たれているので、この作品では単純な意志力よりも上位に来る何かがあると示唆されているという事になりますね。
では主人公サイドにあってミルドラースに無かったものは何かという話になり、具体的に色々挙げる事は出来ますが作中で最も強調されていた要素で言うと意志ならぬ"遺志の継承"ではないかと思います。
続きを読む【トライアングルストラテジー感想】何かを選ぶ事の意味をロールプレイングで体験出来る秀作【8919文字】
2022年3月4日にSQUARE ENIXさんから発売された『トライアングルストラテジー』をプレイし、先日エンディングの1つを終えました。
ゲームシステム、ストーリー、音楽やビジュアル、ゲーム内で確認出来る細かい世界設定などこの世界に没入出来る工夫が散りばめられた上で強固にまとまっており、結論から言うとここ数年プレイしたゲームの中で最も満足度が高かったゲームかもしれないというくらい楽しめてしまいました。
終わった直後は「Switch持ってる全人類このゲーム買いだろ!!!!!」と絶叫していましたが、そんなわけもなく少し経って冷静になりました。
それでも、このゲームが気になって購入を検討している人やプレイしたけどイマイチだなと思った人にも自分が感じた素晴らしポイントを可能な限り伝えたいと思って筆を執る次第です。
主な内容は以下のように
- ざっくりとしたゲームの概要と進行方法
- 良かった点
- もう一歩欲しかった点
- 見かけた否定的な意見に対して思う事
という順番で書いていきます。
未プレイ済の方にも向けた記事なので製品版でしかわからないストーリーのネタバレは含んでいません。
続きを読む【もののけ姫感想&批評】これは人と自然の物語ではなく、命によって意志と向き合う物語【11092文字】
- 序文
- 例えばこんな視点からのもののけ姫
- 死と隣り合った生は生足りえない
- アシタカの眼に映った眩しい生
- アシタカの「生きろ」とは
- 夜叉にとってアシタカは何者だったんだろうか?
- タタリの呪いの渦中から外れた者達
- 何故モロはサンを救えなかったのか
- ジコ坊に与えられた役割
- シシ神の存在は余りにも美しい。無駄が無い。
- あとがき
序文
少し前の話になりますが、劇場で再上映していた『もののけ姫』を観てきました。自分の年齢的に劇場でやっていた頃は楽しむのが難しかったのでこういうspecialな催しは嬉しいですね。
元々好きだった作品で、最後に観た時と比べて色んな視点を獲得する事が出来ると思ったので備忘録兼批評・レビューとして記事にする事にしました。
公開から時間が経っている上にジブリ作品という事で作品外の様々な情報や言及が存在しているとは思いますが、本記事では"作品内で提示される情報のみ"を元に批評を行います。
簡単に言うと「監督(や別の人)がああ言ってたからこう」「制作秘話にはこういう裏設定が書いてあったよ」「実は元ネタはこれだからそれは違う」の類はクソ喰らえ、筆者と作品以外の要素は介在させない。という事です。
また、ネタバレなんかもゴリゴリにあると思うので基本的には視聴済みの方向けの記事となります。
例えばこんな視点からのもののけ姫
死と隣り合った生は生足りえない
本作は「自然と人間の対立」や「自然との共存の難しさ」「形はどうあれ人間は最終的には自然には敵わない」と言った自然vs人間の形を取った物語ではありません。
中身でやっている事はむしろ人vs人(と同等の知性や心を持った生物達)、もっと言えば勝手に己の中に敵を定めてしまった者達のお話であったように思います。
皆自分の利益を追求し居場所を守る為に発展させる為に奮闘し、それを邪魔する者を敵として処理しようとする者達。
そうした生きるのに必要なものを求める血生臭い戦いの中で、皮肉にもタタリという「無条件に死に至る呪い」を生んでしまいました。
タタリは恨み、憎しみ、怒りと言った負の感情を振り撒きながら、対立する相手に破滅やまた同様にタタリを与えるので、一度生まれてしまえば返し返されで死の輪廻が発生するような仕組みになっています。
つまりタタリは死そのものと言っても大袈裟ではなく、この世界では生を求めて我武者羅に敵を作るのでは結局回り回って自分達に死が返ってくるかもしれない、という事ですね。実際にタタリで死に至る者もいます。
つまり「そのような生き方」は死に等しい。純然たる生では無い。という事が作中では示されていました。
そんなタタリの死の渦に主人公たるアシタカは運悪く巻き込まれ、そして物語を経て断ち切りました。
と言う事は彼の在り方は回り回って死が迫ってくるような死に等しい生ではなく、真っすぐな純然たる生だったと言えます。
じゃあ具体的にアシタカの在り方って?この物語で示された「純然たる生」って?
そんなアシタカラヴな視点からの批評記事です。
結論から言ってしまうと「自分から湧き出る意志そのものを命を以て肯定する」というのが最も大きな軸だと考えます。
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